個人補償の解決へ決意戦争責任巡り社党田辺委員長、鹿溝橋訪れ演説

【北京11日=青木康晋】中国を訪問している社会党の田辺委員長は11日午前、日中戦争の発端となった慮溝橋事件(1937年)の現場である北京市郊外の慮溝橋を訪れ、抗日戦争記念館で日本の戦争責任について演説した。この中で田辺氏は「社会党が日本軍国主義の犠牲になった人々の実態調査を関係者や関係団体と協力して進め、日本政府に償いをするよう迫る」と述べ、日本がアジア諸国の人々の個人レベルの補償要求に、誠実にこたえるべきだとの考えを表明した。
 田辺氏は、中国の故周恩来首相が1972年の日中国交正常化にあたり、当時の田中首相に披露した「前事不忘、後事之師(前のことを忘れずに、後の戒めとする、の意)」の格言を引用。「日本軍国主義の犯した罪に対する償いを、日本国民が進んで引き受けることが必要だ」と指摘した。
 日本政府は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を除いて、政府間の対日請求権問題は解決ずみで、個人補償には法的根拠がない、との姿勢をとっている。これに対し、韓国・朝鮮人の元BC級戦犯や元従軍慰安婦らが、相次いで日本政府を相手に、補償を求める訴訟を起こしている。
 田辺氏は昨年12月8日に東京で、日本の植民地支配と侵略戦争に謝罪の意を表明、補償問題の重要性を指摘する演説をしている。今回は、改めて中国の人々に対しその気持ちを直接伝えるとともに、社会党として、補償問題解決に向けて具体的な行動を起こす決意を示したものだ。

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慰安婦問題で政府筋語る

軍関与、否定できぬ

謝罪 データ集めてからの話


 防衛庁の図書館で見つかった「従軍慰安婦」関係資料について、政府筋は11日、日本側にこのような資料が存在していたことは、それなりの重みがある」としたうえで、「当時の軍の深い関与は否定できない」と、これまでの政府側答弁などから一歩踏申込んだ見解を示した。
 朝鮮人女性を中心とする慰安婦問題について「学者や市民団体の努力で、実態が急速に明らかになりつつある。以前の答弁の時期と今とでは、情報量が違う面もある。政府は調査
を避けているわけではない。さらに官民をあげて事実を調べていく」と述べた。
 今回の資料については「慰安所の管理や監督が中心で、軍が直接徴用したというようなストレートな資料ではない」としながらも、「貴重な積み重ねのひとつだろう」と評価した。
 日本政府としての正式な謝罪については、「さらに徹底的にデータを集めてからの話。まだ膨大な資料が眠っているはずだ」としたが、具体的な資料価値の程度や時期については言及を避けた。
 また、朝鮮人元慰安婦らが日本政府に補償を求めていることには「(日韓間で締結された)条約・協定解釈の問題。法律論だ。個人的には何らかの償いをするべきだと思うが、司法の判断を注視している」と述べた。


軍の関与

北海道にも資料 陸軍省が「娼婦の誘致」

 日本軍が戦時中、従軍慰安所の設置や慰安婦の募集を監督、統制していたことを示す通達類や陣中日誌が防衛庁で見つかったが、札幌市の北海道開拓記念館では、陸軍省整備局戦備課が、強制連行された中国人のための「性的欲望考慮」として、朝鮮人、中国人慰安婦の誘致を進めるよう業者に指導した「苦力管理要綱草案」が11日、見つかった。
 北海道炭碩汽船が作成した「昭和15年 募集関係雑 労務課」のつづりの中から見つかった8ページの資料で、1940年3月22日付になっている。
 同要綱草案では、強制労働させていた中国人を「苦力(クーリー)」と呼び、「内治、外交等に関する諸般の影響を考慮し管理の万全を期す」との方針が書かれ、賃金の支給、宿舎などの衣食住、福利施設、労働条件等が規定されている。
 厚生施設の項目に、「性的欲望考慮」として「朝鮮人、支那(しな)人娼婦(しょうふ)の誘致」と書かれている。
 この資料は、記念館が81年に資料として北海道炭碩汽船から寄託を受けて保管しているもので、この資料の直前には、戦備課長が差出人となった同汽船あての封書と強制連行労働者の労務管理に関する会議の案内がとじ込まれている。


市民団体が慰安婦110春闘設

昨年12月、3人の元朝鮮人従軍慰安婦が日本政府に対して補償と謝罪を求める訴訟を起こしたが、訴訟を支援する日本人女性や在日女性の4団体は、14日から3日間、「慰安婦110番」を開設する。慰安婦について多くを知っているはずの旧軍人、軍医、従軍看護婦、募集関係者などに、「歴史の真実を掘り起こすために、どんな情報でもいいから協力してほしい」と呼びかける。
主催は「日本の戦後責任をハツキリさせる会」などで、電話は03−3263−9437から9439までの3本。朝9時半から午後5時半まで受け付ける。


資料明るみ韓国で詳報

【ソウル11日=波佐場清】日本の植民地支配下、日中戦争や太平洋戦争でかりだされた朝鮮人従軍慰安婦が日本軍の統制、監督を受けていたことを示す資料が見つかったとの朝日新聞の報道は11日朝から、韓国内のテレビやラジオなどでも朝日新鹿を引用した形で詳しく報道された。16日からの宮沢首相の訪韓を控え、韓国内ではこの問題に対する国民の関心が高まってきている。
これに絡んで、韓国の李相玉外相は11日、韓国記者らに対し、「(宮沢首相訪韓に伴う)韓日首脳会談では元従軍慰安婦問題に関する日本側の適切な立場表明があると考えている。韓国政府は在外公館を通じてこの問題に関する正確な真相究明と資料調査を引き続き推進する」と語った。




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